社会学をざっと知ることができる本


私は社会学にあまりなじみがありませんでした。

大学時代が理系で、会社は銀行、独立してから教育、ということで直接的に知ることがありませえんでした。

哲学探究の流れから、そしてDJ教員のYoheiさんが「社会学好き」と言っていたこともあり、入門の入門書を手に取ってみました。

おもしろい!

基本的には「社会をどう解釈するのか」という学問だと理解しています。

薄手の新書一冊をもって語るのははばかられるのですが、新たな視点を提供してくれます。

エビデンスなど科学的アプローチが微妙な領域ではあるでしょうが、自分としての発想は広がりそうと思います。

備忘録を作成しましたので、以下にシェアします。この中から気に入った本を読んでいきたいと考えています。

 

オルテガ・イ・ガセット「大衆の反逆」(1930)

  • 大衆=平均人=他の人々と同一であると感じることに喜びを見出す

<ひと言>これを90年前に言っていたんだ。すごいなあ、嫌われただろうなあ。笑

 

ノルベルト・エリアス「文明化の過程」(1939)

  • 文明化=野蛮の駆逐、自己抑制の強化~意識や欲求が合理化される
    • 西洋:中世「食卓につばを吐かない」→16世紀「つばを踏み消す」→18世紀「ハンカチまたは痰壺に吐く」→20世紀「痰壺は裏に」→壺が消滅
    • 日本:違式詿違条例(イシキカイイ/1872年):裸・腿出し・立小便の禁止等
  • 文明化の原動力:他人の思惑に注意を払うこと
    • 戦時「情動は常時発動準備」→平時「広く機能分担する他者依存型の場」
  • 戦いの場(不安)は外部から自己に移動し、「超自我」(=衝動監視装置)を形成
    • 「自己抑制不足懸念」「抑制された衝動と超自我との葛藤」から生じる不安
  • バランスが崩れると「文明化の挫折(非文明化)」が起こる(ホロコースト等)

<ひと言>現代人の「つば」はどこに行ったのだろう。JKの腿出しは条例違反では?

 

ディヴィッド・リースマン「孤独な群衆」(1950)

  • 伝統志向型(「恥」)→内部指向型(「罪」)→他人指向型(「不安」)
  • 他人指向型:敵対的協力←同輩の承認を得るための「限界的差異化」競争
  • 各型に「適応型」「アノミー型(不適応型)」「自律型(社会規範同調と選択の自由)

<ひと言>敵対的協力による限界差異化競争…現代人せつなすぎる(笑)

 

ユルゲン・ハーバーマス「公共性の構造転換」(1962)

  • コーヒーハウス=市民的公共圏=国家と市民社会の分離
  • 18~19世紀:文芸的公共圏(平等性、自律性、公開性)→政治的公共圏へ
  • 19c末:社会福祉国家化→国家と市民社会再融合(社会の国家化、国家の社会化)
  • 20世紀:マスメディアによるパブリシティ操作→操作的公共性
  • 20世紀末:ネオ・コーポラティズム(巨大利益集団)、電子的公共圏

<ひと言>国家の歴史概念は日本と違うんだろうなあ、と感じました。

 

ピーター・バーガー「社会学への招待」(1963)

  • 良心とは社会の内面化(社会の囚われの身であると同時に、社会を作っている)
  • 社会学は「ものごとはみかけどおりではない」とする。人間の営みを「社会的カーニバルと見る喜劇の感覚」。人生を少しばかり明るくすることができる。
  • 社会学的視点=現実の暴露・体裁の剥ぎ取り・相対化

<ひと言>このシニカルな視点が社会学?!笑 文句を言いながら日本を形成しているぜ、私も。

 

イヴァン・イリッチ「脱学校の社会」(1970)

  • 隠れたカリキュラム
    • 教員序列の男女の差異、時間割の科目毎時間数、等→暗黙の教え込み
    • 福田恆存(「教育・その本質」):子供といふものが敏感なものなのであります。子供の眼には、なにもかもありのままに見える。(中略)大人がなにかを隠さうとすれば、その隠したものは見えないかもしれぬが、大人がなにかを隠さうとしてゐるといふ事実だけは、子供はちやんと見てとる。子供といふものはさういふものです。教師や親がみせようとしたものを見ない。教えようとしたものを学ばない。かれらが見せようとも教へようともしないところで、かへって子供はなにものかを学びとる。
  • 教育の学校化:教授されることと学習することを混同。学校で教授されることが教育だとみなす。免状を能力とみなすようになる。
  • 想像力の学校化:「教育と学校、健康と治療、安全と警察の保護、を同一視」⇒制度の整備・拡充が重視され、真の教育、健康、安全への配慮が喪失
  • 学校化された社会(Schooled society)~専門職社会への受益者への準備

<ひと言>イリッチ、強烈!かっこよし。読みなおそぉっと。全員がこんな人だったら大変だけど(笑)

 

ミシェル・フーコー「監獄の誕生」(1975)

  • 系譜学(ニーチェが採用)による解明
  • 18c中:見世物公開処刑→19c初:断頭台に簡略化→矯正刑→19c中:規律の刑罰
  • ディシプリン(規律/訓練)権力:身体・感情を自発的に制御させる微視的権力
  • パノプティコン(一望監視装置)

<ひと言>近代が「暴力・見せしめ」を「監獄・学校」へシフトさせた。が、もはや制度疲労は否めない。フーコーも読んでみたい、業の深い人生を歩んでいそう。

 

ピエール・ブルデュー「ディスタンクシオン」(1979)

  • 身体化された文化資本(教養等)、客体化された(書物)、制度化された(学歴)
  • 「文化資本」再生産による階層化:文化資本→学歴資本→社会的地位→経済資本
  • 文化遺産の相続:「文化貴族」「文化成り上がりもの」「文化庶民」
  • ブルデューの階級論:資本総量=経済資本+文化資本

<ひと言>「文化資本」の考え方は切れ味あり。これは根深い問題で原著から40年経った今も継続中。かみくだくと「親の『カネ+知性』」の格差が階級化すると言っているわけです(日本だと後者はPoliticallyに述べにくい)。時代は変わってきてますが。

 

ランドル・コリンズ「脱常識の社会学」(1982)

  • 社会の存立基盤は非合理的感情(合理性ではない)
  • 契約の成立には「双方が契約を守るという信頼関係(合理より感情)」に依存する
  • 良心とは社会の内面化(社会の囚われの身であると同時に、社会を作っている)

 <ひと言>契約という合理的取り決めがワークする大前提として「相手は約束守るよね」という根拠のない感情がベースになっている。おもしろい!

 

アーリー・ホックシールド「管理される心(感情労働者)」(1983)

  • 感情労働=他者への配慮が要請される労働→感情の商品化・感情の集中管理
  • 過剰な感情コントロール過多→「本来的」「自然な」感情を求め感情探しが恒常化

 <ひと言>感情労働者を超えて「感情奴隷」に追い込むブラック企業がシャレにならない。

 

ウルリヒ・ベック「危険社会」(1986)

  • 再帰的近代社会(Reflexive):放射能汚染・地球温暖化や過剰な産業生産・教育生産など近代化自体が原因の「危険社会」~解決には「脱専門化」「超専門化」必要

 <ひと言>そうですね、「良かれ…」が問題を複雑化させる、公害はその典型でしょうね。

 

アンソニー・ギデンズ「近代とはいかなる時代か」(1990)

  • ハイ・モダニティ社会:複雑さとダイナミズム→暴発・解体リスク=不安が伴う
  • その源泉①:「時間と空間の分離と空洞化」~時計や地図が時空を抽象化
  • 源泉②:社会システムの「脱埋め込み」:「象徴的通標(貨幣等の流通媒体)」+「専門家システム」=「抽象化システム」~ローカルな世界の埋め込みからの解放
  • 源泉③:社会関係の「再帰的秩序化」:思考と行為が互いに反証し、制度的に再帰。
  • 近代社会のリスク:①~③→複雑性が増幅し意図せぬ帰結→再帰し思わぬ世界に

<ひと言>この①~③は興味深い。つける薬がないけど…

 

ロバート・D・パットナム「孤独なボウリング」(2000)

  • 日本における社会論:学歴社会論と格差社会論の類似、論じられるほどに、利己的行動に拍車をかける。格差「感」社会は、制度全般への「不信社会」である
  • 社会関係資本」=「社会的ネットワーク」×「美徳(=互酬性と信頼性の規範)」⇒返礼の繰り返し→ネットワークの更新・持続→市民的インフラ→生活の質向上
    • 地域社会活動参加率等の解析:「世代交代50%、共働き家族増大10%、通勤時間増大10%、テレビ等娯楽25%」等により70年代から衰弱化

<ひと言>「社会関係資本」も「文化資本」も「〇〇x資本」の構成。他に何かあるかなぁ。面白い論考だけど、最後の解析の「世代交代50%」は理由になっとらん気がします。今の世代はなぜ?まで解析してほしかった。ただ、「共働き」「通勤時間」「テレビとネット」さもありなん。

 

少しでも参考になればハッピーです!

 

<堺谷武志の略歴>

大阪出身、京都大学工学部、南カリフォルニア大学MBA、三菱UFJ銀行(海外駐在やアジア戦略担当)を経て独立。2006年インターナショナルな環境で人と自然にふれあうプリスクール「キッズアイランド」設立。保育士。一女の父。週末登山家。

2019年教育起業家とともにNPO法人ソダチバ・プロジェクトを設立し、代表理事に就任。幼稚園でもインターでもない第三の選択肢「HILLOCK Kinder School」を設立。将来は「ヒロック・オルタナティブ小学校」を設立たいなぁと活動中です。
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