日系アメリカ人とシンガポーリアン(バイリンガル論)


バイリンガルと一口に言っても様々な形態があるというお話をしたいと思います。

日系アメリカ人の家のバイリンガル

バイリンガルにはいろいろな形態があります。

ずいぶん前になりますが、知人のおばさんが日系アメリカ人宅に嫁いでいるのでという縁で、その方の家に遊びに行く機会がありました。

 

お父さんが日系2世で、お母さんが日本生まれ(LAに来て何十年)のご家庭でした。

お子さんは30代男性で、ガールフレンドも日系アメリカ人です。

日本人というより、アジア系アメリカ人といった振る舞いです。

 

両親、特にお母さんは子どもたちには日本語で話しかけていました。

それに対して、子どもたちの返答は英語でするのです。

 

一方が英語で話して、もう一方が日本語で話す。それでコミュニケーションが成り立っているのです。

  • 聞く:どちらの言葉でも聞いて、意味を理解することは可能。
  • 話す:自分の表現がしやすい言葉を使う。子どもの方は、日本語は聞けるけど話せないと言っていました。

いわゆる4技能でいうと、「話す」「聞く」のバランスが取れていないことになります。

 

別の日系人(彼は3世)は、おじいさんの日本人としての価値観を尊敬して、私以上に武士道というか伝統的な日本人らしさを保っていました。

日本語は限られた機会でしか使わないと言っていましたが、上手でした。

ですので、一つ目のエピソードも一例に過ぎないのですが、衝撃を受けたことを覚えています。

シンガポールのバイリンガル

一方、似た状況はアメリカの後に3年ほど駐在したシンガポールでも見かけることがありました。

 

例えば、レストランの隣のテーブルにいる大家族の食事です。中国レストランでしたので、ほとんどが中国系です。ただ、マレー系のおばあちゃんが混じっている。

 

お父さんは中国語で話す、おばあちゃんはマレー語で話す、子どもたちは英語で話す、みたいなバラバラの状態。笑

中国語とマレー語が飛び交いながら、会話が成立している。

ただ、よく聞くと、子どもは相手によって話す言葉を変えていました。トリリンガル!

それでも、書くまで行くと内容にもよりますが、2か国語・3か国語というのはハードルが高くなるだろうなと思います。

 

アメリカのバイリンガルとシンガポールのバイリンガル、こうなると、何をもってバイリンガルというのかわからなくなってきますね。笑

 

アメリカのバイリンガルは、2世代目で大きく「英語オンリー」にシフトして、オリジナルの言葉が薄くなっていく印象があります。

シンガポールは、主に中国系、マレー系、インド系からなりますが、それぞれが「オリジンの言葉+英語」の両方を話す人が多いです。国の方針でもあります。

個人的な意見ですが、日本人にとっては、シンガポール流の「日本語+英語(+中国語?)」といった形がいいかなと思います。

 

やっぱり家族とのオリジナルの言葉での意思疎通は素敵だなと思ったことが大きいです。

どんなバイリンガルを目指すか

そして、バイリンガルについて、個人的には以下のように考えます。

4技能において完璧なバイリンガルは、ハードルがかなり高い。

どちらかの言語を軸にすることを決めた方がいい(どちらも中途半端にならないために)

小学校の教科書を何語で学ぶかが、一つの大きな分かれ目

最後の点について、軸を決めるには、何語の教科書で小学校時代を過ごすかが大切になると思います。

というのも、小学校高学年辺りからアカデミックな語彙が爆発的に増えるからです。

理科の時間で植物を例にとるとこういうことです。

日本語で言うと、植物、花、茎、根

英語でいうと、Plant, flower, stem, root

この程度だと、どちらの言葉レベルですとバイリンガルもむつかしくありません。

しかし、めしべ、おしべ、ガク、繊毛、葉脈、まで行くと、両方の言語で覚えるハードルが一気に上がります。

日本人なら多くの小学校が知っている言葉でも英語ではハードルが高くなって、それを子どもが地道に覚えるのはかなり退屈だと思われます。

ですから、小学校を日本語の学校に行くか、インターナショナルスクールに行くか、で大きな分かれ目です。

 

その後、中学、高校、大学にかけて、このような言葉、表現がどんどん出てきますので、2国語間の語彙の差は広がります(私はMBA留学をしましたが、その時の語彙は英語の方がしっくりくることが多いです)

一般的な教養人の語彙は2万語程度、日本の難関大学レベルで6千語程度とすると、3倍の語彙の差を埋める必要があるわけで、どちらかが軸になるのはある種必然だと思います。

これはどちらを軸にしても同じですね。もちろん、一定レベルまで行っていれば後から埋めていくことも可能です(かなり大変ですが)

 

日本人家庭のお子さんで「どちらの言語をメインにするか」は大きな課題

両親の母国語が異なる家庭環境の場合は、両方の言葉を親が使い分けながら進めていくので、比較的シンプルだと思います。

日本人同士の保護者のご家庭の場合、お子さんのメイン言語をどうするかは大きな課題だと思います。

バイリンガル教育に関しては、裏目に出ると「日本の文化に違和感を持ちつつ、英語もネイティブには届かない」という懸念もあるわけで、このあたりは保護者の方も悩むところではないでしょうか?

ご家庭によって考え方は様々だと思います。

 

個人的な意見を申し上げますと、やっぱり軸を日本に持っていた方がいいかなと思います。

①日本人としての教養(幅広い知識と深い思考力)を持ちつつ、

②英語で世界を広げる

もちろん、例えばアメリカに移住して、日本から国籍を抜くつもりならいいと思います(中華系の方で結構いらっしゃいます)。シンプルにアメリカ人として生きていく。

ですが、そうでない場合は「よりどころとしての日本」は大切な気がします。多様化の時代ですから。

 

一方で、日本人家庭で。日本で暮らす場合にこれをどのようにして実現するか、そこは大きなチャレンジです。

インターに行ったら行ったで日本語の勉強をする必要がありますが、日本の受験の流れに巻き込まれると十分な英語力をつけるのに制約を受ける、ジレンマがあります。

 

このあたりはあくまで個人的な意見です。

 

少しでも参考になればハッピーです!

 

<堺谷武志の略歴>

大阪出身、京都大学工学部、南カリフォルニア大学MBA、三菱UFJ銀行(海外駐在やアジア戦略担当)を経て独立。2006年インターナショナルな環境で人と自然にふれあうプリスクール「キッズアイランド」設立。保育士。一女の父。週末登山家。

2019年教育起業家とともにNPO法人ソダチバ・プロジェクトを設立し、代表理事に就任。幼稚園でもインターでもない第三の選択肢「HILLOCK Kinder School」を設立。将来は「ヒロック・オルタナティブ小学校」を設立たいなぁと活動中です。
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