京のぶぶ漬けを食った男


皆さん、京のぶぶ漬けの話ってご存じですか?

結構有名な話ですが、ご存知ない方に一応説明しますと、京都でお宅にお邪魔している時に、そこの家の人に

「ぶぶづけでもどうですか?」

と言われたら、

それは「もうお帰り下さい」と言う意味ですよ、という話です。

 

こういうのを「語用論的意味論」というらしいです。

「文脈によって言葉以上の意味を持つ」という話で、専門的に研究している方もいらっしゃるようです(ネットのうすーい情報です、すみませんw)

Do you have the time?

一例が…

「今何時間わかりますか?」という質問に対して

「わかります」とそのまま答えるだけだと不十分ということで、例えば

「もうすぐ2時ですよ。」と答えなきゃいけない。

(場合によってはさらに「そろそろ出発の時間ですね」などが付いてくる)

 

これはおそらく他の国でも同じじゃないでしょうか。

Do you know what time it is?

とか

Do you have the time?

と質問をして

Yes, I do. だけ答えられたら、「いやいや、時間教えてよ」となりますよね。

 

これの上級編が「月がきれいですね」でしょうか?

京都のブブ漬け

この文脈は文化にも大きく依存していて、その典型例が冒頭の「京都のぶぶ漬け(お茶漬)」です。

 

 

京都人はおもんばかることを覚えさせるために、このような話を聞かせて育てるのでしょうか。

「ぶぶ漬けでもどうですえ?」

この「でも」の用法がいかにも京都のイケズな言い方と私なんかは思ってしまいます(私は大阪出身です)笑

ただ、これは半ば笑い話としてはよく聞くのですが、実際には「ぶぶ漬けでも…」と言われた人は多くないのでは?

もし、相手がこの話を知っていたら、言う方も無粋ということになるでしょうから、奥ゆかしい人ならなかなか言えない。

これは「文化」にも「同調圧力」にもなる

この話って、インナーサークルにだけ通じるある種の「美」を仲間内で楽しみ、育むということだと思うのです。

分かる人はオッケー(というか当然)、わからない人は「無粋」だと。

文化とはそういう側面があります(と思います)

都市化で人との物理的距離が近づくと、お互いが気持ちよく過ごせるような形で礼儀を洗練させていく、そこに文化が芽生えるという意味で。

 

同時に、これはある種の「忖度」や「同調圧力」にもなりえます。

「分からない人を排除して楽しむようなところ」はいじめに通じるところもあります(と、私には思えます)

京都の人たちの「イケズやなあ」と笑いながら目が笑ってない会話は、門外漢で鈍い私にもわかるときがあって苦笑してしまいます。

「まあ、なんて複雑な世界」と。笑

 

ただ世界標準で考えると「京のぶぶ漬け」なんてどうでもいい話なんですよね。

京都に来た外国人観光客に「ブブ漬け、どうですか?」と聞いたら、みんな「日本(京都)の人はなんて親切なんだ」と思うでしょう。

あるいは

「もてなすにしては質素な食事だな。これが『ジャパニーズ・ワビサビ』か」と日本通なら思うかもしれません。笑

少なくとも「ぶぶ漬けでも…」と言われたフランス人なりイタリア人が「そろそろおいとまします」と言い出すとは思えません。

実際に、ぶぶ漬けを食った男はいるのか?

で、前置きが長くなりましたが、このぶぶ漬けの話を実際に言われて、さらに、実際に食べてしまった人っているのでしょうか?

本日ここまで語用的意味論を学ばれた皆さんなら、文脈からお分かりですね。

 

私は学生時代に、京都の町中からは少しはずれた場所で家庭教師をしていたのです。

(いきさつは省きますが)ある晩、そちらのお母様に言われました。

「遅くなったのでお腹が空いたんじゃありませんか?お茶漬けか何か食べて行かれませんか?」みたいな話でした。

 

当時、知らなかったんです、ぶぶ漬けの話。

少し迷ったのですが、用意してくれていたのなら断ると申し訳ないなあとか思ったのでしょうか?

あるいは、迷ったら前に出る!と攻めの姿勢を貫こうとしたのでしょうか?

それとも、子どもは遠慮しないでよろしいと言われて育った私が無邪気だったのでしょうか。

私は、満面の笑みで答えました。

「えっ、いいんですか。ありがとうございます😊😊😊」

そして「はーい、少しお持ちくださいね」と言われて。

けっこう待ちました(笑)

ふつうお茶漬けって「永谷園+ごはん+お茶」でしょ?

2分くらいで出てくるもんだと思っていた私は「あれぇ、結構長いなあ」と思ったのですが…

20分くらい経った頃でしょうか

見たこともないゴージャスなお茶漬けが出てきました。笑

お漬物とおつまみが数種類ついて、お膳に乗って。

「ここ料亭?(行ったことないけどw)」とか心の中で突っ込みながら。

 

何も知らない私は「美味しいですね」を5回くらい言いながら平げ、

進められるがままに「オカワリ」までした記憶があります。超ご機嫌でした。

ああ、無知とはおそろしいものです

続きの話

で、この話には続きがあります。

その帰りの自動車(送迎付き!)の中で、お母様から…

「ぶぶ漬けの話ってご存知ですか?京都の街中の方ではそう言うらしいんですけど…」と。

一通りご説明いただいて、

「ウチは古くからの家でもなくて。そんなことはないので気にしないでくださいね」と。

 

本当にいいお母さんだったので、わざとバラしてくれたんだと思います。

おかげでとても深い学びになったのですが、その後一度も京都でぶぶ漬けを勧められる状況に出会さないままに今に至ります。

もしかしたら、リアルぶぶ漬け以外のぶぶ漬け的語用論でいっぱい恥をかいているのかもしれないなあ。ぼおーっとしたところがありますので。笑

 

質問なのですが、どなたか「京のぶぶ漬け」を実際に食べたことある方、いますか?

あるいは、実際に「どうですか?」と切り出されたことがある方、いらっしゃいますか?

私は他に出会ったことないので、いたらぜひ教えてください。

時節柄、その方たちと「オンラインぶぶ漬け忘年会」でもできたら楽しそうです。

 

 

少しでも参考になればハッピーです!

<堺谷武志の略歴>

大阪出身、京都大学工学部、南カリフォルニア大学MBA、三菱UFJ銀行(海外駐在やアジア戦略担当)を経て独立。2006年インターナショナルな環境で人と自然にふれあうプリスクール「キッズアイランド」設立。保育士。一女の父。東洋拳法二段、京都伝説のアマバン「コンプレックス」のボーカル。週末登山家(最近へたれ気味)。

2019年教育起業家とともにNPO法人ソダチバ・プロジェクトを設立し、代表理事に就任。幼稚園でもインターでもない第三の選択肢「HILLOCK Kinder School」を設立。2022年4月「ヒロック・オルタナティブ小学校」を設立します!
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