先日の講演より(4)ホモサピエンスの潜在能力


講演スライドシェアシリーズ④です。

今回から第二部で、少し人類の歴史を振り返ってみよう!

ホモサピエンスの潜在能力には「生きるたくましさ・したたかさ」を身につけるヒントがあるのでは、というお話です。

 

人とふれあうことの大切さ

 

ヒト科の子育てを他の類人猿と比較すると「社会で子どもを育てる」と言うのが大きな特徴とのことです。

 

チンパンジーの子どもはいつも母親にしがみついています。

人間の赤ちゃんは頭も重いし、母親に抱き着く力はほぼありません。

なので地面に置いて育てます。地面に置いても体温が下がらないように皮下脂肪が厚いそうですw

泣いたら、母親以外でも誰かが抱き上げてあやす、そうやって何万年も育ててきたのだとか。

 

それが今では、ほとんどの時間を母親だけと過ごすことも多いのではないでしょうか。

我が家も両方の実家が関西でこちらに身よりもなく、私は夜は遅くて出張も多い中、妻一人に子育ての負担がかかっていました。

雨でも降ったら、マンションの一室で子どもと二人で煮詰まっていく、みたいな。

 

この環境は、子どもにとっても「社会・感情面の発達(≒非認知能力)」において重大な危機です。

他のスキルはまだしも、社会的スキルは人と接することでしか育まれないからです。

 

文化人類学者のレヴィ・ストロースは「親族の基本構造」の中で、家族以外の親族(特におじさんの存在)の重要性を述べています。

今の幼児が育つ現場はほとんど女性(母親たち+幼稚園・保育園の女性たち)で、バランスに欠けるよう見えます。

ご家庭以外のおばちゃん、おっちゃん、おねえちゃん、おにいちゃんと幅広く、つきあいたいものです。

 

色んな人を観察することで、子どもは「このおばちゃんは優しい(使える)」「このおっちゃんは気をつけよう」とかまだら模様の人間関係を学んでいくのですが、

人付き合いのデータベースが少ないと「家は安全 vs. 外はわからない(または危険)」といった単純な図式になりがちです。

 

「社会で子どもを育てる」という人類の勝利の方程式からズレてきているかもしれません。

 

自然とふれあうことの大切さ

 

このスライドでは、自然とふれあうことの大切さを述べています。

 

人間も自然の一部ですし、自然から学ぶことで発展してきました。

自然のよいところは、身体性を伴う遊び(=体験)を蓄積しやすいことでしょう。

 

子どもの自然遊びには、人類の進化の歴史がビルトインされているのではないかと思うほどです。

・どんぐり集め(採集の記憶)

・虫を捕まえる(狩猟の記憶)

・砂遊び(農耕の歴史)など。

 

自然というのはアナログの世界であいまいです。

安全か危険か、栄養か毒か、何が正しいか間違っているのか、すべてなだらかな連続体で、ゼロかイチのデジタルの世界ではありません。

このあいまいさと付き合うことが人間性確保のためにも大切だと類人猿研究の権威である山極教授は言っています。

 

また幼児期に自然遊びをたっぷりしていた子どもは、小学生時の体力面でそうでない子を有意に上回ります(スポーツ庁)

体力は生きるチカラの基本でもありますよね。

 

自然の中で遊ぶことで学ぶ。これが、ヒト科の子どもの本来の過ごし方ではないでしょうか。

 

現代っ子ってあわただしくないですか?

童話で「ガチョウの金の卵」という話があるのですが、ご存知ですか?

 

金の卵を産むガチョウのおかげで大金持ちになったのですが、欲張った持ち主は「もっと!」「早く!」と言って、ガチョウのお腹を切り裂いて卵を探した。

お腹の中に卵はなく、ガチョウも死んでしまったというお話です。

 

あるいは「植物に水と栄養は必要だが、与えすぎると根が腐ってしまう」という話。

 

いずれも「育て」に対しての節度を説いた話だと私は理解しています。

 

ヒト科は、子ども期を長くすることで繁栄した珍しい動物だと言われています。

他の多くの動物は、敵から食べられないように成人までの期間が短くなる方向で進化します。

 

人は逆で「未熟な期間を長くする」風変りな動物だった。

しかし、これにより「色々試して失敗する余地が大きくなり、変化への適応性を高めることができた」のだと言われています。

 

今は「大人の世界(効率化・経済性)」が子どもの世界まで、どんどん下りてきているように思えます。

しっかりと子ども時代を未熟な期間として過ごすことが大切だと私は思います。

 

  1. 社会で育てる基盤が弱くなっている(人とのふれあいの不足)
  2. 身の回りの自然が減少(自然とのふれあいの不足)
  3. あわただしい子ども時代(試行錯誤やぼーっとする時間の不足)

 

日々は当たり前のように過ぎていきますが、忙しい現代社会だからこそ、子どもの育ちの環境について振り返ってみることが大切です。

そんな時、ふと太古の歴史に思いをはせてみるとヒントがあるやもしれません。

 

<堺谷武志の略歴>

大阪出身、京都大学工学部、南カリフォルニア大学MBA、三菱UFJ銀行を経て、キッズアイランド設立。保育士。一女の父。週末登山家。

現在「都会の子どもに『ソダチバ』を!」プロジェクト推進中
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