書感:赤坂真二×堀裕嗣 ~転換期を生きる教師の学びのカタチ


有名な教師二名による往復書簡。教育関係者だけでなく、40~50代の企業人で部下を持つ人が読むと、なるほどと唸るはずです。

 

本の内容は多岐にわたって、簡単に説明できないので、読んでもらうしかないです(笑)

往復書簡にしたのがよい効果を生んでいます(素晴らしい企画だと思います)。

対談よりも遠慮なく突っ込めていて、それぞれの著作よりも主張の背景・論理がわかるといういい距離感。面白くて、スリリング。

本書の前書きに「人ではなく論を述べたい」と書かれてあるのですが、私はどうしても人に興味がありまして…

著者のうち、堀氏は北海道のカリスマ教師(中学校)であり、赤坂氏は小学校教諭を経て大学院で実践&研究をされています。いずれも全国に信奉者がいるようです。

 

赤坂氏は、堀氏のことを熊、自分のことをあわれな羊のように表していますが、この羊が草食動物に見せかけて鋭い牙をもっていて、同時にある意味で熊の最大の理解者、かつ解説者でもあります。

当たりの柔らかさに捕らわれると、見間違うでしょう(笑)。すみません、失礼ですね。

 

堀氏は、FBをフォローするようになって、フィードに出てくるコメントを読んで、その言説の濃厚さに「すごっ」と思いながら、その自信満々の、悪く言えば傲慢な語り口に「なんだ、このんな教師がいるのか?!」と思いました。それで、手始めにこの本を手に取りました。

威圧感があって豪快な印象ですが、たぶんかなり繊細な方です。強気発言の後にはいつも詳細でロジカルな説明を付されていますので。間違っていたらすみません。

教師に限らず、部下に持つ人全てにとって参考になる本

この本は、20代~30代の教師に向けたとてつもなく厳しくて、とてつもなく親切な励ましの本です。

お二方の強い自負、多少の上から目線、深い謙虚さ、後輩への愛情などにあふれます。

ただし、成熟期を迎えたその道のプロ二人が、予定調和なしに、意地の張り合いもしながら、戦後から現在にわたって、ミクロからマクロまで、教育論のみならず人間論について語るので、読み手にもかなりの覚悟が必要です。

読者の側にも、頭の良さ、真摯さ、反骨精神が要求されるわけです。でないと、飲み込まれて終わりそうな気がしまう。

それでも、気合いを入れて、2~3回読み直せば、その度に発見のある素晴らしい本だと思います(と、偉そうに言えるほど、理解できていないかもしれませんが)

 

PS:こんな担任だったらなぁ。ただし、一年限定(笑)

自分が生徒だった頃に担任をもってもらいたかったなぁと思います。ちなみに私は同世代です。

堀さんは1年でいいかな、赤坂さんも最長2年かな。

 

それ以上はぜいたくな話でしょうし、個人的には過去の経験から、いけてない(担任や)上司の時の方が伸びるタイプだったと思いますので、1~2年で十分。

いい上司だと楽で気持ちがいいのですが、悪い上司の時の方が自分を究極まで詰めて考えたり、対応したりしました。そして、それが自分自身の成長につながった気がします。

 

適当であてずっぽうな数字ですが、たぶんこのレベルの教師は1000人に一人くらいの割合でしかいないと思います。

なので、小中高12年間で、ほとんどの人はまず出会わない。

 

そして、もし私がこんな教師に出会っていたら、今頃プリスクールを経営してなかったでしょう。

「こんな人たちに教育を任せられない」と小学高学年の時に感じたことを、執念深く持ち続けて、30年後にスクールを立ち上げたわけですから。

 

そしたら、こんなステキなキッズアイランドも世の中に存在せず…

それは、日本にとって大きな損失だったかも、なんてね(笑)←ここ、オチですからね!

 

PS2:Our generation

本書について、「団塊の世代」と「20代から30代」について述べ、「40代~50代」を「はざまの世代」としていますが、またの機会に、お二人が自分たちの世代を更に深堀りして述べられるのを楽しみにしています。

 

個人的には、自分たちが受けた教育に関して、以下の影響を受けた世代だと思います。

・子どもが増えていく時代で、受験競争が激化。試験も効率化の一環で、共通一次試験(のちのセンダー試験)が定着してきました。

・「これだけやれば大丈夫」といった参考書が出てきたり、合格請負人である予備校で効率的に合格する方法が伝授され、知を「費用対効果」でとらえることが普通になってきた時代かと思います。

・共通一次試験で薄くまんべんなく点数を取ると、二次試験がそれほどでなくても合格してしまう戦術が取れます。上位層の、特に数学・理科、英語において、深堀りする力が前の世代と比較して落ちたのではと思っています。

・まとめると、与えられた問題を効率よく解く力、難問を捨てるスキル、等は上がったが、深く分析して解いていく力、あるいは、粘り強く正解にたどり着くような力、を欠くようになったのではないかと考えます。

つまり、我々の世代は、問題を発見する力や新しい考えを生み出す力、もっと言えば、クリエイティビティや起業力に欠けた世代でしょう。

ビジネスの世界でいいますと、我々の世代は、マジメに既存事業を拡大する工夫もしましたし、その根性もありました。入社してからはバブルの後始末に追い立てられたこともあります。上の世代が詰まり、組織が硬直化し、なかなかチャレンジしにくい時代でした。色々な事由はあります。

ですが、事実として、いくつかのネットビジネスを除いては、我々の世代からは、家電や自動車に次ぐ世界的競争力のある新たな産業や事業を興せなかったように思います。

私が見ている限り、今の20代~30代の方がしなやかに新たなことにチャレンジしていく人たちがいます。社会起業など自分のメシを食う次のステップのことに取り組む人たちもいます。

そこに大きな救いを私は見ています。

<関連ブログ>
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<堺谷武志の略歴>
大阪出身、京都大学工学部、南カリフォルニア大学MBA、三菱UFJ銀行を経て、キッズアイランド設立。保育士。一女の父。
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