思うこと:教育起業がどんどん出てくる!3つのキーワードとは?
「ICT」×「ゆとり」×「震災」のパワー
去年中ごろから色々な方にあっていて、今後の日本の教育は、若い世代の起業の活力によってより良いものになっていくんじゃないだろうかと期待しています。
日本の民間教育では、現在どんどんと新たな教育サービスが出てきています。
私には、この動きが一過性のものではなくて、「ICT」×「ゆとり」×「震災」という底流のようものの組合せによるものだと感じられるのです。
まず、いきなり結論から入るようなのですが、
-
「ICT」により起業しやすい環境になったところに
-
「ゆとり」と呼ばれるしなやかなな世代が(その教育効果も追い風に)
-
「大震災」をきっかけに、深く考え決断した、
その結果、新たな教育起業がどんどん出てきている。ということになります。
この3つの要素のそれぞれは、今後もどんどん強まっていく傾向にあります。
ですから、このムーブメントは当面続くのではないか、ひいてはそれが日本全体の教育を良くしていくのではないかと考えています。
10年前と大きく異なる教育系の起業環境
少し背景から説明していきますと、
私は2006年に銀行を辞めて、プリスクールを立ち上げました。
それからつい最近までスクールの経営に専念していて(というか、実態は追われていてw)、ある意味世の中の動向に無頓着でした。
最近は、教育関連の書物を多く読んだり、あるいは教育関係の人たちとSNSでやり取りをしたり、あるいは直接話をしたりするようになりました。
実は「話をしたり」「やり取りをしたり」というのは、かなり偉そうな言い方で、「教えを請う」ためにすり寄っているというのが正しい表現です(笑)。
今、公教育でも新指導要領を踏まえた次世代の学びが導入されつつありますが、
民間では更に自由度の高い様々な取り組みがここ5年間でリリースされています。
様々なタイプがあるのですが、以下が代表的です。
- 探究型・体験型 ~ 教わるではなく、生徒が探求や体験を通して学ぶ
- STEM教育 ~ いわゆる理系的な分野、作りながら学ぶ
- グローバル教育 ~ 英語教育、及びそれを越えてインターのスタイルで学ぶ
これらの動きは、私がプリスクールを始めた10年ほど前には、ほとんど見られなかった動きだと思います。
オンラインだけでなく、教室やセミナーといったリアル型も含めて、これ以外にも新たな教育サービスはどんどん出てきています。
AIやグローバル化への危機感もあるでしょうが、
同時に、日本全体として「そろそろ次のステージに動きたいよね」という感覚があるのではないでしょうか。
「経済だけじゃ物足りないよね」とか
「世の中、もっとこうあるべきだと思うんだけど…」とか
「なら自分がやってやろう!」と言った気持ち
実際に、新教育サービスの担い手の方々とお話しすると、世の中をよくしたいという「まっすぐな想い」が伝わってきます。
その多くは、設立後5年までの会社によって担われています。
教育関連の、特に教室系事業は、受験以外はなかなか利益率が上がらない業界でもあって、苦労されることも多いでしょうけど、
理想を掲げて前進する姿を見ると、これは日本にとって大きな希望だなぁと思うのです。
なぜ、このようなダイナミックな動きが起こりつつあるか?
そこには、冒頭に挙げた3つ(「ICT」×「ゆとり」×「大震災」)があるというのが私の仮説です。
その1:ICTの発達(環境・手段として)
最も大きな影響が、ICTの発達であることに異論はないでしょう。ざっくり2点。
- オンライン型の教育サービス/EdTechの普及:極論すると、世界で一番の知恵やサービスを、自分のペースで学ぶことができる。これは「教える‐教わる」関係の歴史的な転換です。
- ICT活用による集客負担の劇的な低下:リアル型教育(教室やセミナー)の場合、新しいサービスを普及させることは、従来はとても大変なことでした。現在では、SMSを含めICT活用で、集客コストは大幅に低下しています。
教育以外でも世の中に大きな影響を与えたICTは、比較的な保守的な教育の世界にも容赦なく広がってきています。
個人的には、プリスクール開設に向け、新聞折り込みを手配し、配布日には電話がなるのをドキドキ待った時のことが思い出されます。
100万円以上もチラシにお金をかけて、フタを開けたら初日の生徒がたった1名。
これが、たった10年ほど前のことですが、今は昔ですね。
それに比べると、新サービスを具現化するにも、顧客募集にしても、今はずいぶんと低いコストでスタートできるという意味で、起業環境が整っていると言えます(教育関連に限りませんが)
もちろんコスト面での参入障壁が下がれば、競争自体が激しくなっていくと思います。
ですが、お金もそれなりには必要だけど、アイディア勝負で小さく始められるという点は、やはり大きな利点だと思います。
その2:ゆとり世代(担い手の中心として)
年末にかけての3ヶ月ほどで教育関連の方々(起業されている方が中心)約30名とお話しさせていただきました。
多くは企業からの転身組で、「なんか人と違うことをやってやろう」というこだわりを持った人たちです。
その中で、同世代の50歳以上は3名でした(これまでも成果を上げ、かつ、今も攻めているカッコいい人たちです。尊敬!)
ただ、ほとんどの方は40歳を筆頭に多くは30代で、中には20代の方もいらっしゃいます。
いわゆる「ゆとりと呼ばれる世代」です。
ここで誤解がないように、私は「世代論が基本的には嫌い」です。人それぞれだと思うからです。
また、起業する人の多くは一般的に20代、30代だと思いますので、無理に世代論にのせる必要もありません。
ですので、ここで、私が「ゆとり世代」と援用しているのは、たまたまその世代に合致したということにすぎません。
(「ゆとり」の名称は公式なものではありませんが、1987年生まれ、少し広めに見ると1984年生まれ以降、つまり、33歳くらいまでの方と言われています)
それでも、私はいわゆる「ゆとり教育」の効用があったのでは!、という意味で使いたいと思うのです。
量だけでなく、総合学習など質的なものを追求することによる教育効果のようなものです。
お会いしたのは起業家がほとんどで、同世代の中でもそもそも高い意識と力量の持ち主なのでしょう。
会っていて感じるのは…
・物怖じしない(年齢や権威に対して)
・さわやかだけど、しなやかな力強さがある
・社会的な問題意識が強い
・新しい考えに柔軟/ICTスキルが高い
・周りに起業している人が多い
世代的なものと言えばそれまでなのですが、教育効果もあるような気もします。
この辺り、実感としてはどうなのでしょうか?実際に教えられた現場の教師の方々がどのようにお考えか、機会があればうかがってみたいです。
さらに、この世代には多くの帰国子女がいます。海外と日本の教育の違いからくる問題意識から、教育に取り組む人も多いように見受けられます。
知り合いに起業経験者が多く、起業に対する抵抗感が小さいのもこの世代の特色かと思います。
印象論なのですが、上の世代と比較してより「多様性」を感じます。
多様性、つまり違いを認める・前提とするという考え方がメジャーになってくると、周りに同調するのがばかげてきますし、新しいことや人と違ったことをすることになるでしょう。
その3:大震災(きっかけとして)
3つ目が「大震災」の影響です。
言うまでもなくずっと癒えることのない大惨事であり、このような形で取り上げるのは、関係された方に不快な思いをさせてしまうかもしれません。
ただ、一人ひとりが震災を機に色々と深く考えたのだと思います。
死や苦が希薄化されがちな現代において、天災のむごさ、命のはかなさなど、人にとって本質的なことを考えるきっかけになったはずです。
特に、若い世代はそれが行動に反映されやすいと傾向にあると思います。
-
人生は一度切りだからと、起業のふん切りをつけた
-
(深く考え抜き)同じやるなら世の中のためになることをしたいと思った
このような深い思考から「教育起業」「社会起業」が生まれきたケースが多々あると思います。
実際に、教育起業した複数の方から、震災がきっかけという話はうかがいました。
まとめ
まとめますと、
現在、民間教育で起こっていることとして、
- 「ICT」により起業しやすい環境があったところに
- 「ゆとり」と呼ばれるしなやかな世代が(その教育効果も追い風に)
- 「大震災」をきっかけに、深く考え決断した
その結果として、新たな教育サービスを提供する起業家がここ5年間で急激に増えている。
これらの事業の少なくない部分が、社会問題への意識の高さを反映しています。
10年前だとやってみようと思わないようなことも含まれています。
・教育の将来を語りあうために数百人集めてしまう
・低所得者層に学習機会を与えるクーポン制度を作ってしまう
・ホームレスに居場所や仕事を一緒に作ってしまう
これを20代の人たち、場合によっては学生が手掛けてしまうわけです。
肩に力を入れるわけでもなく、仲間を募って、しなやかに取り組んじゃいます。そこに賛同する仲間がまた集う(本当は大変なのでしょうが、少なくとも私にはそう見えます)
キーワードは「しなやか」。僕らの世代みたいに暑苦しくない、あ、僕だけかもしれませんが(笑)
私などは同世代でこんな取組みをしている人たちを直接知らないので、「すごいなぁ~」と素直に感心してしまいます。
あと面白いのは、私が無邪気に「すごいよね~」と感心していると、
「堺谷さん、気をつけた方がいいですよ。何やっているかわからない人いっぱいいますから」とか
「お金は集めているんだけど、実際はどうなのかな。けっこう悪いやつもいますから」とか
忠告してくれたりすることです(笑)
いやー、もう、本当に頼りになる人たちです(笑)
今後の見通し
「ICT」×「ゆとり」×「震災」によるこの新たな動き、私はまだまだ続くと考えています。
なぜなら、それぞれの要素が伸びるからです。
ICTも更に発達しますし、学びの多様化への欲求やニーズも高まります。
物心ついたころに震災を経験した人のインパクトは、今の中学生くらいまでずっと続きます。
そして、公教育の場でも、自分の持ち場で変えていこうと工夫と努力を重ねている教師がたくさんいらっしゃることも知っています。
「へ~、今の学校って個人の工夫でここまでできちゃうんだ」と感心する動きも見ます。
今はまだ個人技が多いような印象を受けますが、そういう人同士がSNSでつながっていて、今後の希望です。
このような地道な動きが広まるといいなあと心から祈ります。
そして、このような公と民の新たな動き、どこかで臨界点に達すると思います。
そうなると、日本人は変わり身が早い。そういう時は変わらないことがリスクになる国です。
(「それはまだ難しい」とか言っていた人が、「なんでウチはやっていないんだ。」とか言い出しますから(笑))
そして、公教育も民間教育も、日本の教育がグリンと一斉に進化!
そんな時代が訪れるんじゃないかな、とひそかに期待しています。
それは、意外と早いのか、それとも時間がかかるのか、あるいはいつまでも変われないのか?
それまでの間、それ以上の年代の人たちのやるべきこと、やれること。
お金を持っている人は投資したらいいと思います。
が、それ以外の人は、「邪魔をしない」「芽を摘まない」ということだと思います。
手伝いたいとか一緒に歩みたいと思うなら、上から目線ではなく、一兵卒としてやるんだと思います。
ワタシ?
若い人たちに教えを請いながら、時代にくらいついて、ガンガン突き進みますよ~!
<堺谷武志の略歴>
大阪出身、京都大学工学部、南カリフォルニア大学MBA、三菱UFJ銀行を経て、キッズアイランド設立。保育士。一女の父。週末登山家。
現在「都会の子どもに『ソダチバ』を!」プロジェクト推進中
(プロフィール詳細はこちら)
著者・堺谷武志が運営するプリスクールは「キッズアイランド」はこちら
著者・堺谷武志の個人Facebookページはこちら
お気軽にお友達申請してください。ブログの更新情報やその他趣味の山登りについて等も投稿しております!
ここまでお読みいただき、まことにありがとうございます。 応援していただける方は、以下のボタンを押していただけると助かります(サイトに飛びますがそれだけで、清き一票と数えられます)

にほんブログ村