書感:日本の教育の構造に関する本(7冊)


教育に関して、歴史や特徴的な構造について読んだ内容を備忘録的にまとめておきます。

 

日本教育小史 A

学校の戦後史 B

教育委員会~何が問題か A

日教組 A

いじめの構造 B

文部科学省~「三流官庁」の知られざる素顔 C

本気の教育改革論 C

読む優先順位としてA、B、Cを付しました。いずれも、新書など薄い本で簡単に読める本です。

 

<これら7冊からのまとめ>

現代においても、戦前からの全体主義的風習(号令で動かす、運動会、体罰)、一部日教組所属教員による偏向教育(本当に本にあるように実在?)、日本独自に発展した教育委員会や日教組などの独特の体制、などの影響を引きづっている、という特殊性を客観的に理解すべきと考える。

 

公教育の行政には不案内ながら、現時点での個人的見解を備忘録としてまとめておきます。

・ここ20年程度の選挙結果などを踏まえると、自民党政権を中心とした勢力の考え方を主軸とした教育方針で全体は進めていくこととなる(概ね妥当と考える)

・教育委員会は次世代を見据えた組織改編を行う。基本的には地方分権化を行う。文科省は、長期的には全国一律的な統制を放棄すべきであろう。

・子どもの権利を守れるように、いじめ・体罰について聖域視をやめ、一般社会の暴力と同様の取り扱いを行うべきである。

・現場の教師の自由度を高め、また、民間との連携も広げ、深める中で、新時代の教育に対応できるようにする。

・急増する教育現場の事務負担への対応は、民間の知恵も導入して行う。

・子どもの福祉の観点に反するような教師(例:政治活動、偏向教育を行う教師、から処分を厳格にする方法がないか検討をする(変な教師に担任されると1年間待たないといけないのは、子どもにとって本当に不幸)

・政権が、右傾化や個人の権利抑圧につながらないように、一人ひとりの国民がきっちりと監視をすべきであろう。

 

<各著作のまとめや感想>~長いです

日本教育小史

「日本教育小史」を以前読んだ「文部省の研究」を比較してみると、こちらの方がやや政府への批判色がある。但し、1987年発行で 30年前の本。幕末から約30年前までの教育について述べたものである。

明治最初の「学制」には「学問のすすめ」の影響あり。ある意味、今より現代的な印象。

1.武士だけじゃなく全員が学ぶ

2.個人の立身が学ぶ目的

3.実学の重要性

<戦前の主な出来事>

教育勅語、国旗・国家

運動会(管理されたまとまり)、遠足・修学旅行(行軍を参考にしたもの)

クラス前後のあいさつ、朝礼(号令)~気をつけ・礼などの号令による

教科書国定化

<戦後の主な出来事>

教科書の統制

50年代 勤務評定

指導要領の拘束力強化

教科書無償措置とセットでの広域採択(結果として教師から教科書選定権を奪う)

 

この手の本は、複数の入門書を読んで、互いに批判的に読むことが大切であると思う。

日本の教育現場には、日本人が当たり前と思っている中にも、国家主義的な仕掛け(号令、運動会、遠足など)が残ったままになっている、ということは意識しておかなければならない。

 

国家としては、個人の権利を抑圧する方向に行きたくなる、と考えるのが自然。いったん締め付けて政府が楽をしてしまったら、二度と緩むことはないだろう。

おそらく、教育現場も30年前と比べても、今の方が「息苦しさ」のようなものを感じているのではないだろうか?

自由により規律が育たないというのは、本当か。そこで得られた規律とは何なのか?

 

学校の戦後史(木村元)

1890年頃、年齢が多様な子供たちの等級ごとの集合体であった教室の場は、年齢差が1年未満の子どもたちが「同級」生として、教師と一緒に過ごす生活の場へと空間の意味を変えたのである。

1880年以降、運動会は集団行動訓練である兵式体操の奨励と日清戦争の戦意高揚策として学校毎に行うかたちが普及されていったとされている

聯合運動会のために会場まで移動するのが遠足であったが、これが「校外教授」というカリキュラムに組み込まれた。

 

感想:この本は、学校の「枠」のようなものを丁寧に追っている感じの本である。

 

教育委員会~何が問題か

現在、教育委員会の事務局支配によって、中央から地方教育委員会にいたる「タテの行政系列」として制度化されている、ということが本書の主旨。

・教育の中立性の確保が設置(維持)の一つの主要理由

・委員会の委員は、政治家とは別に地方の有識者が有給・非常任で行う。

・実務は、教育長を中心に事務局が行い、その主要メンバーはエリート教員(教育大学系卒業者が中心)

・事務局と現場管理者(校長など)は行き来している。

・予算的にも地方行政における大きな部分を占めている

 

教育委員会によって、現場の教師は評価され、烙印を押されていく

いじめによる自殺などの場合の、教育委員会の対応は保護者の信頼を得ていない

 

地方分権の流れの中、特に教育だけが中央からのタテ行政

首長VS教育委員会の構図になっている。

教育の地方行政のあり方が問われる。

 

感想:

文科省に、やっぱり最後はコントロールしたいという気持ちがあるんでしょうね。

たしかに、問題があったら何でも政府の責任にするこの国で役人をしていたら、野放しにすることはできないでしょうけど。

かと言って、いじめに対する教育委員会の対応などを見ていると、制度疲労は否めない。

 

日教組 

2010年の本。民主党政権時に警鐘を鳴らす目的で書いたと著者が述べている。

これしか読んでいないので何とも言えないし、ポジショントークもあるだろうが、比較的事実に即して書かれているかな、との印象(わかりませんが)。

 

以下が要旨。

ピーク時の実質的な加入率は100%であったが、現在は3割弱、30万人にまで落ちてきている。自民党が切り崩してきた歴史。

組合員の過激さの度合には幅がある。

学校にいながら授業以外は組合だけの仕事している教職員からの損失を計算すると、600億円以上になる。

日教組は民主党を支援(現在は立憲民進党)、親玉は輿石参議院議員、ミスター日教組は北朝鮮から受勲している。

日教組の入会率と生徒の成績には連関性はない(つまり、教師としての質が劣るということはなさそう)

安易な日教組悪役論は避けるべき、ある意味では自民党との共犯と考えるべき。地域によっては、教育委員会と日教組とのなれ合いがある。

 

感想:

政治的中立性については、時の政権に沿った方針であるべきという話だという理解。

戦前の反省を持ち出されることが多いが、国が軍国主義になった状態で教育だけが全く無関係ということはあり得ないのではないか。

 

国民の信託を受けた自民党政権下が長期化している現状では、日教組において社会主義活動(違法な政治活動)を行う輩は許せないという点については、大きな違和感はない。

 

政治、行政(文科省)、教育委員会、の間にもずれがある。

公立である限り、国としてミニマムで求めるべきものは管理するべきであろう。

これからの時代に対応可能なように、教員の自立性を上げる必要がある。

同時に、不良教員(違法政治活動や偏向教育者)をどう対応するか(=生徒から引き離すか)は考える必要がある。

この手の教員にも、雇用継続されるべきという権利はあるのだろうが、そのために「担任になった子どもたちは気の毒ね~」で済ませてきたとしたら、それは本当に悲しい。

 

いじめの構造 「なぜ人が怪物になるのか」

・「いま・ここ」のノリを基準とした「群生秩序」がある

・群れの中では、「強いものが正しい」という身分がある

・不全感(ムカつく)を満たすために、主に暴力をふるうことによる他者コントロールにより全能感を得ようとする

・自殺するまで抜け出せない状況は起こり得る

 

・学校は閉鎖空間でベタベタすることを強要され、その環境が「群生秩序」を助長する

・加害者、被害者、傍観者に分かれる。傍観者もびくびくしながら従う「感情奴隷」の状況

・教師が頼りになるどころか、加担することもある。

・被害者の親や、学校批判をした保護者の子どもが次にいじめられることもある。

 

・短期対策は、学校の聖域視をやめ、警察など司法をこと。

・長期対策は、学校のシステムをオープンに変えていく

 

<感想>

・構造がこれでもかというくらい分析的に語られている。読んでいて息苦しくなる。

・個人的には、傷害罪もしくは集団暴行罪?に「いじめ」という特殊な名前をつけることが許せない。警察を呼ばないことがおかしいと思う。

・同じくらいおかしいのが、過失致死傷罪や傷害罪に「体罰」や「行き過ぎた指導」という特殊な名前をつけていること。

・子どもの命という最低限の権利が守られない状況で、何が教育だと思う。理不尽な暴力に対して泣き寝入りせず、警察に通報することを教えることこそが最低限の教育ではないのか。

・これは教師、教育委員会、文科省がいくら屁理屈を言っても、許されるべきではない。

 

くしくも、不登校の大幅な増加が発表された(報告基準変更の影響も大きいが)。子どもたちが突き付けてきているこの現状に対して、大人は何ができるのだろうか。

 

文部科学省~「三流官庁」の知られざる素顔

・ゆとり教育のスポークスマンであり、ミスター文部省と言われた人(寺脇研)の著作

・基本的には、いわゆる保守派というより、善意の人で自由な教育を求めている。ただし、既存の枠組(文科省主導)でという印象。役人としては、柔軟な方に思える。

 

本気の教育改革論

 

寺脇研さんによる、現職の事務次官を含め14人との対談。事務次官(当時は前川氏)から、元日教組委員長まで精力的にインタビュー。

 

ご本人にはゆとり教育への未練があるご様子。私も感覚的には賛同します。ただ、手垢がついてしまったので、今更言っても仕方がないかなとも思います。

時折、ゆとり世代の学力は決して悪くなく、導入してから一定期間経過後の生徒の成績はむしろ良かったといいたげなご様子。

(但し、本来は、ペーパーテストで測れないスキルを鍛えようということなので、それを言うのはどうかとも思うが。。。)

ゆとり世代の学力を証明できる方法ほしい。

というか、政策が評価できるような枠組みをセットで作って、フォローできるようにしておかないと、子どもはただの実験台になってしまう。

個人的に「ゆとりだから…」みたいに言う大人は無責任で許せない。

ゆとりつぶしは、経済界のサポートを得た経済産業省が動いたともいわれているという言説を読んだことがある。

 

<以上>

 

 

 






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