書感:年末年始の6冊


年末年始に読んだ主な本です。どれも面白かったです。

 

人類の未来(2017年)

やわらかな遺伝子(2014年)

GRIT(やりぬく力)(2017年)

スクラム(2015年)

教育改革をデザインする(1999年)

学歴の経済学(2016年)

 

将来創りたいと思っているオルタナティブ小学校で「こんなことができたらいいな」というヒントが満載の6冊でした。

・遺伝子(個性)を尊重すること

・人との接点からしか生まれない非認知能力をどう育む環境を作るか。

特に、今回は「チームの働き」が参考になりました。

「やわらかな遺伝子」のニッチ・ピッキング、「GRIT」の良い選手になるには良いチームに入る、「スクラム」のチーム・パフォーマンス、などの話。

切り口は違いますが、人が社会的動物であり、個の力を発揮するには周りとの相互作用が必要ということが最確認できます。

 

科学の先端を英語でインタビューするレベル(=ジャーナリストとしてグローバルに活躍できるレベル)だと、これくらいの力量が必要とわかるのが「科学の未来」です(本は日本語ですが、これを英語でやったと想定すると「けっこうきついな」と思うことでしょう。

中高生をお持ちの保護者には「学歴の経済学」がオススメです。「教育改革を…」は正統的な改革案だと思いました。

 

<個別論>備忘録ですので、ご了承ください。

 

人類の未来(チョムスキー他、吉成真由美インタビュー・編)2017年4月初版

ノーム・チョムスキーはじめ各分野の知識人5名へのインタビューです。

AI、グローバリゼーション、環境、政治・経済などについて、深い話がされています。

面白かったのは、シンギュラリティについて、真っ向から意見が分かれたこと。

こんな頭のいい人たちでも一致していない意見なら、自分には分かりっこないと逆に妙な安心をしてしまいました。

「うん、将来分かりっこない、なるようにしかならない。よし、それで行こう。そして、目の前に集中しよう」と。

 

気候変動モデルについても「宗教だ」と喝破する人がいて、非常にエキサイティング。

 

それにしても、この吉成真由美さん、世界の代表的知識人からこれだけ引き出せるというのは、本当に素晴らしい力量です(NHK取材班のサポートもあるのでしょうが)

心から尊敬します。

 

やわらかな遺伝子(マット・リドレー)2014年7月

 

「生れか育ちか(Nature VS Nurture)」の議論に終止符を打ち、かと言って「どっちも」に留まらず、「Nature via Nurture」つまり「生まれは育ちを通して」実現されるのですよ、というのが本書の主旨。

遺伝子は、設計図ではなく料理レシピのようなものだと言う。同じレシピでも、料理の仕方で味に差が出るようなもの。環境にも影響されうる」

 

遺伝の影響は私が想定しているより大きいようです。

「教育は特に子供のうちは、もちろんIQにも影響する。が、大人になるにつれ遺伝子の影響が大きくなり、中年以降では80%が遺伝子の影響を受ける。」

 

「「スポーツ好き」の遺伝子群を持つとスポーツの練習をしたくなり、「勉強好き」の遺伝子群を持っていると知的活動を求めたくなる。「遺伝子は育ちの因子」なのである

 

かと言って「育ちは重要ではない」ということではない。

環境が似ていると遺伝子による差が目立ち、環境にばらつきがあると育ちによる差が目立つようで、それを以下のように表現している。

「公平な社会では生まれが強調され、不公平な社会では育ちが強調される」

 

これ以外にも、膨大な事例をベースにまとめ上げた本で、知的好奇心はバンバン刺激されます。

 

キッズアイランドに生かすという意味では、

・一人ひとりは遺伝子レベルで違うということを再認識

・そのうえで、教育の効果とは何か?

・教育は、教師も含めて環境。環境をどう整えるかが大切。

 

GRIT(やりぬく力)(アンジェラ・ダックワース、2017年4月)

成功を分けるのはGRIT(やり抜く力)、これは「情熱」と「粘り強さ」から成る。

 

・好きにならないと努力できない

・スキルは3段階で各段階に数年間ごとに伸びていく:初期段階では「楽しく」遊びのように。

・成果を上げるには「意図的な練習」が必要

・習慣化することが大切

・鉄人は目的を持ち、それは人の役に立っていると思えること

・子育てでは、「支援を惜しまず」「要求は厳しく」のが賢明な育て方

・偉大な選手になるには、偉大なチームに入ること(人やカルチャーからの刺激)

 

これも、劣らず面白い本。

生まれより、育ちに関するテーマであって(遺伝の影響は否定されてはいない)、やわらかな遺伝子とは逆の方向性での議論。

 

GRITが「遺伝的な資質」なのか「育ちによるスキル」なのか、これも簡単には言えない。

偉大なチームに入ることが大切というのは、面白い。

学びも「どこで学ぶか」は重要ということだろう。

 

子どもの頃に言われて嫌だったセリフ「努力しなさい」。この言葉はもろ刃の剣。

「要求は厳しく」が苦手な分野だけど、適度に必要ですね。

 

成功をどう定義するか、もっと言えば、幸せとは何かを考えると、このGRITも無邪気に手放しで称賛しても意味がない。

Happiness consists in contentment.も真実であると思うから。

 

スクラム(ジェフ・サザーランド、2015年)

友人に教えてもらった本。

日本初(カイゼン)でアメリカで開発されたScrumという開発手法。

オランダでは、EduScrumとして効率的なグループ学習に活用されている

 

・小さなグループに分けて、Dailyフィードバックを共有することで、4倍のスピードで仕事ができるようになるという話

 

個人の能力を2倍に上げるのは大変だが、グループのパフォーマンスは2倍、4倍上がる。

個人を責めるのではなく、チームの力をどう高めるかを考える方が論理的とはその通り。

(GRITでもチームからの影響を述べていて、チーム作りは本当に大切なんですね)

 

無駄は罪

効率的であることはメンバーの幸福度を上げる

 

世の中には色々な方法があるなあ、これも教育現場で取り入れられそうです。

オランダは、一教師が進めたことで広まったらしいです。柔軟ですね。

 

日本でも、友人は実際にセッションに取り入れ、効果抜群とのことでした。

尊敬します(本当に私はとっかかりが遅い…)

 

教えてくれてありがとう。

 

教育改革をデザインする(佐藤学、1999年)

古い本ですが、まことに正攻法で学校を変えていこうというアイディア。

 

学校としての機能に必要なこと

「教養の伝承(リテラシー)」

「民主主義(デモクラシー)」

「共同体(コミュニティ)」

 

外国人から見ると、日本の小学校はNoizy(明るさの押しつけ)、中学校はQuiet(誰も意見を言わない)

「内申書で子どもの行動を縛るのはすぐにやめるべき」

浜之郷小学校で実践されているとのこと。現在の様子もウェブサイトで拝見。

 

こんな取組みを具現化された方がいるとは。立派なお方です。

 

学歴の経済学(西川純、2016年)

これからの時代の「学歴」のあり方についての本。結構衝撃的です。

・とにかく大学へ、は危険。

・高卒の方が有利かも?

・偏差値60以下の大学なら、こういうところを選ぶべき

・ライフスタイルも変わる

 

言うとはばかられることもありそうですが、ストレートに本質をついていると感じました。

「偏差値60ない人は、大学を考え直した方がいいかもよ」

これを教育界の教授がおっしゃるわけですから、強烈ですね。

こういうオブラートに包まない方、特に教育業界では本当に貴重ですよね。(偉そうな言い方になって申し訳ありません)

やっぱり本音で話さなきゃ。

「学びあい」を推進されている方で、今度はその本を読もうと思っています。

 

娘に読ませなきゃ、でも、いやがるだろうな。

 

 

 

<堺谷武志の略歴>

大阪出身、京都大学工学部、南カリフォルニア大学MBA、三菱UFJ銀行を経て、キッズアイランド設立。保育士。一女の父。

現在「都会の子どもに『ソダチバ』を!」プロジェクト推進中
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